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一曲の合唱曲が、アニメーションの物語になるまで ——『天青フルコーラス』制作実績

『天青フルコーラス』音楽制作・合唱収録支援

2025年2月、卒業制作アニメーション作品『天青フルコーラス』が公開されました。

本作で物語の中心となる合唱曲として使用されたのが、もみじば作詞・作曲のオリジナル楽曲「進みだすとき」です。

当初は、フリーBGMとして制作し公開していた作品でした。合唱曲のフリー素材というのはなかなかありません。だからこそ、私はこう思っていました。

「いつか実際の合唱団に歌ってもらえたら」

そんな思いを込めて作った曲が、学生の皆さまによるアニメーション制作と出会い、練習、編曲の確認、合唱収録を経て、一つの物語の中で生きる音楽になりました。

このページでは、楽曲提供だけでは終わらなかった、『天青フルコーラス』完成までの制作過程をご紹介します。


作品について

『天青フルコーラス』は、コロナ禍における合唱活動を題材にした卒業制作アニメーションです。

人と人が集まること。

声を重ねること。

同じ場所で練習し、一つの音楽をつくること。

それまで当たり前にできていた活動が難しくなった時代に、合唱と向き合う人々の葛藤や思いが描かれています。

劇中では「進みだすとき」が、単に背景で流れる音楽としてではなく、登場人物たちの思いと作品のテーマを担う重要な合唱曲として使用されました。


一通の問い合わせから始まった制作

制作チームの皆さまから、最初に楽曲使用についてご連絡をいただいたのは2024年8月でした。

「進みだすとき」を卒業制作アニメーションの中で使用し、実際の合唱団による歌唱を収録したいというご相談でした。

この曲はもともと、合成音声を用いた合唱曲として公開していたものです。

しかし、冒頭にも書いたように、制作時から心のどこかに、

いつか本当に人の声で歌われる曲になったらうれしい

という思いがありました。

そのため、合唱団による歌唱を前提とした今回のお話は、作曲者として非常にうれしいものでした。

楽曲の使用を了承するとともに、実際の練習や収録に使いやすいよう、制作チームと相談しながら必要な音源や資料を整えていくことになりました。


「楽曲を渡す」だけではなく、歌える形へ整える

作中に登場する「進みだすとき」の楽譜

既存の楽曲を映像作品で使用する場合、完成音源を渡すだけで済むケースもあります。

しかし今回は、合唱団の皆さまが楽譜を読み、パートごとに練習し、実際に収録するプロジェクトです。

そのため、次のような制作支援を行いました。

  • ソプラノなど各パートの練習用音源制作
  • ピアノ伴奏音源の調整
  • 歌唱音域の再確認
  • 歌いづらい可能性のある箇所の代替音の提案
  • 楽譜の再点検と修正版の作成
  • レコーディング方法に関する相談対応

合唱曲は、データ上で音が成立しているだけでは十分ではありません。

実際の人間が呼吸をし、言葉を発音し、複数人で音程を合わせて歌うためには、音域や旋律の動き、母音の響き方まで考慮する必要があります。実際に、一部合唱のしやすさを考慮し、変更した点もありました。

制作チームからは、音楽を専門としていない自分たちだけでは気付けなかった点を丁寧に修正してもらえて助かった、という言葉をいただきました。

作品の意図を尊重しながら、演奏する方々にとって無理のない形へ整えていくことも、音楽制作の大切な一部だと考えています。


合唱団によって、音楽に新しい表情が生まれた

2025年1月、実際の合唱団による歌唱映像が届きました。

自分で書いた歌詞、旋律、和音が、多くの人の声によって本当に響いている。それは、作曲時にパソコンの中だけで聴いていた音楽とは、まったく異なる体験でした。

一人ひとりの声にはわずかな揺れや息遣いがあり、それらが重なったとき、合成音声では表現できない奥行きが生まれます。

音域的に難しい部分もあったと思いますが、合唱団の皆さまの練習と技術によって、美しいハーモニーに仕上げていただきました。

後日、複数のマイクを使用して収録された音声データも共有していただきました。

録音専用の環境ではない中での収録だったとのことですが、現場で人が歌っている迫力や空気感が伝わる音になっていました。

録音は、プロの現場でも難しい作業です。

単に音程が合っているかだけではなく、マイクとの距離、部屋の響き、声量の差、ノイズなど、さまざまな条件が完成音に影響します。

その制約の中でも、作品に必要な「人が集まり、歌った」という実感が残されたことに、大きな意味があると感じました。


合唱を経験していない制作チームが、音楽から物語へ近づく

制作チームの皆さまは、もともと合唱部の出身ではなかったそうです。

そのため、コロナ禍に合唱活動をしていた人々が何を感じていたのかを想像し、作品として描くことには難しさがあったと伺いました。

制作中は「進みだすとき」を何度も聴きながら、合唱に対する思いを高め、作品をつくってくださったそうです。

完成時には、楽曲によって制作への意識が引き締まり、最後まで完成させる力になったという言葉もいただきました。

音楽が完成映像を彩るだけでなく、制作途中のチームにも影響を与え、作品の方向を確かめる役割を果たしたことは、作曲者として非常に印象に残っています。

企画や制作の途中から共有されることで、制作者が作品の温度や感情を確認するための軸にもなります。

今回の制作は、そのことを改めて実感する機会になりました。


完成作品を見て感じたこと

完成した『天青フルコーラス』では、ラストの合唱シーンで、合唱を始める前に「進みだすとき」の曲紹介なされます。

その言葉を聞いたとき、自分で作った曲でありながら、改めてこの曲が持つ意味を受け取ったように感じました。

作品の繊細で現実感のある描写からは、コロナ禍で活動を続けようとしていた人々の姿が思い起こされます。

表現、音楽、演劇、スポーツなど、さまざまな活動が「不要不急」と呼ばれた時代。

その中で、自分たちが大切にしてきたものを手放さず、どうにか続けようとした人がいました。

時間が経つにつれて、当時の息苦しさや葛藤は少しずつ遠い記憶になっていきます。

しかし、この作品は、それらを簡単に忘れてしまってよいのかと問いかけてくるようでした。

曲に込めた想い

「進みだすとき」は、前へ進むことを歌った曲です。

ただし、過去をなかったことにして進むのではありません。

うまくいかなかった時間や、離れてしまった人、声を重ねられなかった日々も抱えたまま、それでも次の一歩を選ぶ。

完成したアニメーションを通して、この曲に込めていた意味を、作曲者自身も新しい角度から見つめ直すことができました。


音楽から始まり、作品を介して戻ってきた物語

公開後、制作チームの皆さまから、卒業制作展のために制作されたフライヤー、チケット、原画集を送っていただきました。

完成映像だけでなく、そこに至るまでに描かれた原画や印刷物を手に取ることで、一つのアニメーションを完成させるために重ねられた膨大な作業を改めて感じました。

音楽を提供した側でありながら、完成後には作品から多くのものを受け取ることになりました。

もみじばのイラスト付き手紙までいただきました!

一曲の合唱曲として始まった「進みだすとき」が、制作チームに選ばれ、合唱団に歌われ、アニメーションの中で物語になり、最後には原画や言葉とともに作曲者のもとへ戻ってきた。

その過程すべてが、この仕事における大切な制作実績です。


本制作で担当したこと

使用楽曲

合唱曲「進みだすとき」

担当

  • 作詞/作曲/合唱編曲
  • 楽譜制作および修正
  • パート別練習音源制作
  • ピアノ伴奏音源の調整
  • 歌唱音域の確認
  • 合唱収録に関する相談対応
  • 楽曲使用およびクレジットに関する調整

使用作品

卒業制作アニメーション『天青フルコーラス』

公開

2025年2月


作品に必要な音楽を、完成まで一緒に考えます

もみじばミュージックでは、既存楽曲の提供だけでなく、ゲーム、映像、アニメーションなどの作品に合わせたオリジナル音楽制作も承っています。

作品の企画段階や、まだ音楽の仕様が決まっていない段階からでもご相談ください。

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