HAL名古屋・アニメーション専攻の卒業制作作品『Plug☆Out!』で、本編音楽を制作しました。
卒業制作アニメーション『Plug☆Out!』オリジナル音楽制作
『Plug☆Out!』は、ゲームの中に吸い込まれた主人公が、雰囲気の異なる複数の世界を巡りながら仲間と出会い、最後にはバグの世界でラスボスと対峙する、約2分30秒の短編アニメーションです。
HAL名古屋 未来創造展2026出展 卒業制作の短編アニメーションです! 抜けたコンセントが引き起こした大騒動。 まさかのゲームの世界へ…!? 様々な世界を駆け抜けるドタバタ大冒険ここに開幕!
最初にご連絡をいただいたのは、2025年10月でした。
監督の望月紀花さんから、専門学校の卒業制作として進めているアニメーション作品に使用する、オリジナル楽曲を制作してほしいというご相談でした。
もみじばミュージックのYouTubeで楽曲を聴き、サイトまでたどり着いてくださったそうです。
いただいた企画資料には、主人公がゲーム世界に入り込み、異なる特徴を持つ世界をテンポよく巡っていく構成が記されていました。
8bitのブロック世界、レトロなおばけの世界、近未来的なロボットの世界、バグに侵食されたボス戦。
音楽に求められていたのは、単にゲームらしい曲を一曲作ることではありません。
約15秒から20秒ごとに世界観が変化しながらも、作品全体としては一つの音楽に聴こえること。
そして、映像の中心となる特徴的なフレーズが、世界ごとに姿を変えて繰り返されることでした。
作品全体を一つにつなぎながら、それぞれの世界に固有の色を与える。
その両立が、今回の音楽制作における大きなテーマでした。
作品全体をつなぐ「耳に残るフレーズ」

望月さんからは、全体的にアップテンポでありながら、ポップに寄りすぎず、耳に残る特徴的なフレーズを軸にしたいという希望がありました。
参考として挙げていただいたのは、8bit、ゲーム音楽、華やかなオーケストラ、ファミコン風エンディングなど、もみじばミュージックで公開している複数の楽曲でした。
そこで、まずは作品全体の核となるメロディーを探るため、方向性の異なる二つのラフ音源を制作しました。
一つは、ゲーム音楽としての分かりやすさを重視したパターン。
もう一つは、音を細かく動かし、よりポップな印象を強めたパターンです。
望月さんや制作チームの皆さまと確認を重ねた結果、よりゲーム的で、作品の進行を明快に支えられる前者の方向性を採用することになりました。
制作初期の段階で中心となるフレーズを共有できたことで、その後の各世界のアレンジにも、一貫した基準を持たせることができました。
同じ曲のまま、世界だけを変えていく
『Plug☆Out!』では、場面が切り替わるたびに、画面の色、キャラクター、動き、空気感が大きく変化します。
そのため音楽も、同じフレーズを繰り返すだけでは、映像の変化についていけません。
一方で、世界ごとにまったく無関係な曲へ切り替えてしまうと、短編作品としてのまとまりが失われます。
そこで、中心となるメロディーを残しながら、音色、リズム、和音、編成、音の密度を世界ごとに変える構成を採用しました。
8bitのブロック世界

冒頭では、作品への入り口として理解しやすいゲーム感を重視しました。
8bitの音色を中心に、主人公がゲーム世界へ足を踏み入れたことを直感的に伝えます。
ただし、単純なレトロゲーム風に寄せすぎるのではなく、後半の展開へ発展できるよう、少し厚みのある音色も混ぜています。
レトロなおばけの世界

おばけの場面では、当初の案を一度大きく作り直しました。
不気味さだけを強くすると、作品全体の明るさやキャラクターの魅力から離れてしまいます。
反対に、かわいさを優先しすぎると、場面固有の違和感や怪しさが弱くなります。
そこで、レトロゲームらしいユーモアを残しながら、旋律や音の間に少し奇妙な動きを加え、怖すぎない不穏さを目指しました。
近未来のロボット世界

近未来の場面では、電子音やリズムの質感を強め、テクノロジーを感じる音へ変化させています。
同じメロディーでありながら、8bitの世界とは異なる時代や空間に移動したことが伝わるよう、音色の輪郭や低音の質感を調整しました。
バグ世界とラスボス戦

ラスボス戦では、作品の中で最も大きな盛り上がりが必要でした。
8bitや16bitを思わせるゲーム的な音色に加え、オーケストラ的な厚みやスケール感を重ねています。
緊迫感だけではなく、『Plug☆Out!』らしいポップさを残すことで、暗く重い戦闘曲ではなく、映像の勢いとキャラクターの魅力を前へ押し出す音楽を目指しました。
望月さんからも、ボス戦の緊張感の中にポップさが混ざっている点を気に入っていただき、何度も聴いたという言葉をいただきました。
8bitではなく、16bitの厚みも取り入れる
制作を進める中で、作品全体を純粋な8bitサウンドだけで構成するのではなく、より音の厚い16bit的な質感や、オーケストラの要素を加える方向へ調整しました。
8bitの音色は、ゲームらしさを即座に伝えられる強い記号です。
しかし、約2分30秒の映像全体を同じ密度の8bitサウンドで通すと、場面ごとのスケールの違いや、後半の盛り上がりを十分に作れない可能性があります。
そのため、
- ゲーム世界を示す8bitの音色
- 16bitを思わせる厚み
- 壮大な場面を支えるオーケストラ
- 近未来感を出す電子音
- ボス戦を押し上げる強いリズム
を場面に応じて組み合わせました。
一つのジャンルに固定せず、映像が求める役割に合わせて音楽の文法を変えることで、各世界の違いを明確にしています。
絵コンテと映像のタイミングを読み取る

今回の音楽制作では、企画書だけでなく、絵コンテや制作途中のVコンテを確認しながら作業を進めました。
アニメーション制作では、初期の絵コンテから完成までの間に、カットの長さや演出が変化します。
『Plug☆Out!』でも、制作途中で演出修正が行われ、当初の映像と音楽のタイミングにずれが生まれました。
そのため、秒数を機械的に合わせるのではなく、
- キャラクターが登場する瞬間
- 仲間が増える流れ
- 世界が切り替わるタイミング
- ボス戦へ入る瞬間
- プラグを差し込むクライマックス
- 戦いが終わり、物語が静かに着地する時間
を確認しながら、音楽の展開位置を調整しました。
完成前の映像から演出意図を読み取り、どの瞬間に音楽が前へ出るべきか、どこでは映像を邪魔せずに支えるべきかを考えることも、映像音楽制作の重要な工程です。
望月さんからは、納品した音楽を受けて、曲の展開に合わせながら本編映像のタイミングを整えていくというお話がありました。
これは、音楽が単なる背景ではなく、映像のリズムを決める一つの軸として扱われたということでもあります。
両者が一方向ではなく互いに影響し合うことで、作品全体のテンポや気持ちよさが高まっていきました。
完成直前まで、音の使われ方を確認する

楽曲納品後も、制作途中の映像を共有していただき、音楽と映像の関係を確認しました。
特に気になったのが、バトル終了部分のタイミングです。
音楽の和音が勝利を予感させる形になっていたため、映像上の決着よりも少し早く、展開を示してしまっていないかを確認しました。
最終的には効果音を加える予定であることを伺い、映像、音楽、効果音を合わせた完成形を前提に調整を進めています。
また、エンド画面で使用する短い特徴的な音(ぜひ、動画でご確認ください!)についても、本編音楽とは別に扱えるよう、音楽データと効果音データを分離して納品しました。
映像編集やミックスを担当する方が扱いやすいよう、完成曲だけでなく、用途に応じた素材の分け方まで対応しています。
完成作品を見て感じたこと
2026年1月、『Plug☆Out!』は完成し、その後YouTubeでも公開されました。
完成映像では、ラフや絵コンテの段階で見ていたキャラクターたちが生き生きと動き、細部まで作り込まれた世界が次々に展開していきます。短い映画を見ているような、密度ある作品に仕上がっていました。
音楽でも、映像の魅力を引き出せるよう、メロディーの覚えやすさと、場面ごとの展開の分かりやすさを重視しました。
一つのフレーズが、世界を移動するたびに異なる表情へ変わることで、作品全体の統一感と冒険の広がりを両立できたと感じています。
望月さんからは、音楽が作品のイメージに合っており、依頼してよかったという言葉をいただきました。
制作者の皆さまが映像を完成させるために追い込みを続ける中で、音楽が作品の完成形を思い描く助けになっていたのであれば、作曲者としてこれ以上うれしいことはありません。
本制作で担当したこと
作品名
自主制作アニメーション『Plug☆Out!』
制作
HAL名古屋 アニメーション専攻 卒業制作
音楽の尺
約2分30秒
担当
- オリジナル楽曲制作
- メインテーマとなる共通フレーズの作曲
- 各ゲーム世界に合わせた変奏・編曲
- 8bit/16bitサウンドの設計
- オーケストラ、電子音を含む編成調整
- 絵コンテ、Vコンテをもとにした展開設計
- 映像尺に合わせたタイミング調整
- エンディング部分の再制作
- 納品後の映像確認
- 音楽と効果音の分離データ制作
公開
2026年1月
一つのメロディーから、作品全体の世界を設計する
『Plug☆Out!』の音楽制作では、場面ごとに曲を作り分けるだけでなく、共通のフレーズを使って、異なる世界を一つの物語としてつなぎました。
もみじばミュージックでは、ゲーム、アニメーション、映像作品の内容に合わせて、音楽をつくりあげていきます。
まだ映像が完成していない段階や、音楽の専門的な仕様が決まっていない状態でも問題ありません。
企画書、絵コンテ、Vコンテ、参考作品などを拝見し、作品の魅力を最も引き出せる音楽の構成から一緒に考えます。